ヌレエフの再来
2017/07/21 更新
 先日、『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン−世界一優雅な野獣−』を観てきました。史上最年少の19歳で英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル(トップ)となるも、その2年後に電撃退団したバレエ界の異端児セルゲイ・ポルーニン。幼少期の映像やロイヤル・バレエ学校時代の親友の証言を交えて、彼の素顔に迫ったドキュメンタリー映画です。バレエについてほとんど知識がない私でも、体の軸が全くブレない跳躍や回転を見て、類まれなる才能の持ち主だということがわかります。そして、映画のポスターには「ヌレエフの再来」の文字。バレエの知識がほとんどないと先ほど書きましたが、この名前なら知っている。競馬をやっていて少し血統をかじっている人なら聞いたことがある馬、ヌレイエフ(Nureyev)。ロシアのバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが名前の由来となった馬で、2001年の安田記念を勝ったブラックホークや、2008年から日本で種牡馬生活を送ったファスリエフの父として有名です。まさかこんなところで競馬の知識が役に立つとは。さて、話を映画に戻すと、13歳で故郷のウクライナを離れて単身英国に渡ったポルーニンは、思春期を家族と離れて過ごすことになる。バレエ学校を飛び級で進級し、卒業後は史上最年少でプリンシパルの座に…と聞けば全て順風満帆にいっているように見えるが、実際はそうではなかった。家族と会えない辛さ、そして両親の離婚を知らされた10代の少年は、酒やドラッグに手を出すようになる。それでも後戻りできない環境に置かれ、バレエに打ち込むしかない。ヒトとウマを比べるのは少々失礼かもしれないが、1歳にも満たない頃に母馬と離れ、トレセンというストレスのかかる環境に置かれ、速く走るためだけに日々トレーニングを積むサラブレッドと重なって見えてしまうのは職業病だろうか。真っ先に浮かんだのは、類まれなる才能を持ちながらも数々の奇行(騎手を振り落としたり、逸走したり)を繰り返していたオルフェーヴル。そして、映画のラストでは再びバレエの舞台に戻り、公演後に家族と抱き合うポルーニンの姿。自らの命を削るようなポルーニンの生き様は、同い年の私にはとても衝撃的でありながらも、自分の生き方を見つめ直すきっかけを与えてくれたように思う。