再会
2018/12/07 更新
 札幌に住んでいた学生時代。中央場所で行なわれるレースはWINSに通って観ていたものの、やはり当時は夏の北海道開催が競馬の中心。私の中でのダート最強馬はエーシンモアオバー(交流重賞4勝。札幌・函館のOP特別で4勝を挙げた)でしたし、札幌記念はテレビの画面越しに観ていたGI級強豪馬たちの夢の競演、さながらグランプリレースでした。
 夏競馬の思い出は数知れず。当時の私は札幌開催中の水曜日に競馬場で行なわれていた公開調教に参加して、ホームセンターで買った安物の双眼鏡を片手に追い切りの様子を見ていました(その頃はまさか自分がトラックマンになるとは思っていませんでしたが…)。その時、黒光りする馬体がダートコースを駆ける姿に一目惚れして、そこから応援するようになったのがビービーガルダン(領家正蔵厩舎の管理馬。4年連続でキーンランドCに出走するなど芝の1200mを中心に活躍)でした。結果的に引退レースとなってしまったスプリンターズSでゲート内突進による放馬のアクシデントに見舞われ、そのまま現役を退いた彼が故郷で繋養されることを知った私は翌年に見学の申し込みをして競馬仲間とともに会いに行ったりもしました。

 今年の夏、そのビービーガルダンや障害・平地の二刀流で注目を集めるオジュウチョウサンを生産した坂東牧場さんにお邪魔させていただきました。
 昭和25年創業の坂東牧場は北海道日高町で競走馬の生産から育成、現役馬のトレーニングまでを行なう総合的な牧場。目玉となる施設は840mの坂路コースと1000mの周回ダートコース。北海道では標準装備ともいえる、雪や雨の日でも馬場状態を一定に保つことができる屋根つきの全天候型で、坂路を駆け上がってくるとそのまま周回コースに入る形になっています。特に函館・札幌競馬開催中は次のレースに向かう馬たちの最前線基地として多くの現役馬がここで調整を行っています。
 私がお伺いした時間はちょうど馬場で調教が行なわれており、走路を映すモニターが何台も置かれている監視室から各馬のラップタイムが逐一報告されています。また調教メニューは各厩舎ごとに組まれているため馬場入りする時間もバラバラ。接触事故を起こさないように他馬との位置関係も乗り手に伝わるようになっています。ストップウオッチ数台とマイクを手に指示を出す様子はさながら航空管制のようです。
 監視室を出て厩舎地区へ移動する間、周りを見渡すと緑の木々が多いように感じました。慣れない乗り運動で精神的に余裕がなくなる若駒や、レースや普段の調教による慢性的なストレスに晒されている現役馬にとっては自然豊かな土地での生活はいいリフレッシュ効果となっているのでしょう。



 今春は3名の若者が仲間に加わり、さっそく調教に騎乗しているスタッフもいました。乗馬未経験の子も乗馬技術を身につけながら働いているそうで、馬だけでなく人材の育成にも余念がありません。昨今、人手不足が叫ばれる日高の牧場。JRAの競馬場でも牧場への就職セミナーイベントが開かれているのを目にしますが、坂東牧場のように未経験者でも働きながら技術を身につけられる環境が整っているのは大きな強みです。



 帰り際に放牧地にいるビービーガルダンに会わせてもらいました。6年ぶりの再会でしたが黒光りする馬体は当時とあまり変わっていない様子。案内していただいた荒木マネージャーは「引退を決断するときはかなり悩みましたし、まだ走れたんじゃないかと思う時もありましたが、牧場の功労馬ですから無事に帰ってきてもらえてなによりです」と話してくれました。これからもガルダンに負けない馬たちが出てくることを期待しています!


放牧地を駆けるビービーガルダン