トップページ
2018.04.05更新

「ゆく春…」

 四季がある。春・夏・秋・冬。日本人が最も短いと感じるのはいったいどれか。アンケートによると、やはりそれは春だという。まあ当然だろうか。桜の命がはかないこと。年度替わりで誰もあたふた忙しいこと。ゆっくり味わいたい季節なのに、日々あっという間にすぎていく。記者自身アタマを駆けめぐるメロディーでいえば、ユーミン「春よ来い」からビージーズ「若葉のころ」…その推移がなんとも高速度であっけない。話が古くてすみません。ついでに書けば、この時季いつも思い出す名曲がもう一つある。「おお牧場はみどり」。雪がとけて川となって 山を下り谷を走る 野を横切り畑をうるおし 呼びかけるよ わたしに――。古く著名なチェコ民謡。もう50年前、中学生ヨシカワは「クラス対抗・合唱コンクール」目標に一同特訓、いやというほど歌わされた記憶がある。トラウマではない。ふんわりと懐かしい記憶だ。

      ☆       ☆

 映画「グレイテストショーマン」を見た。90%以上の満足。春はミュージカル…などと毎年思う。ミュージカルの魅力とは、物語のデキ、説得力ではたぶんない。おおむね笑顔のハッピーエンドであること、ストレートな音楽(歌)効果で、あと味がきわめていいこと。本編は19世紀後半ニューヨーク、天才興行師である主人公が、さまざま困難、苦境、挫折を繰り返しながら、不世出のショー(おとぎの国のサーカス風?)を創りあげる…そんなお話。主演・ヒュー・ジャックマンの歌声には理屈抜きで感動した。堂々朗々として、しかし繊細な温かさがある。隣席の囁きで、ああそうか…と納得した。ジャックマンは5年前公開「レ・ミゼラブル」でジャンバルジャン役。当時も感嘆したのに、すぐ思い出せなったことが情けない。

 ミュージカルへの郷愁。「サウンドオブミュージック」の記憶がおそらく大きい。小学5〜6年生、社会見学と称する授業があり、クラス全員(50名超)みんなで出かけた。有楽町・スカラ座。都下・狛江市(当時北多摩郡)の小学生だから、銀座まで地下鉄に乗る…それだけで興奮した。ともあれ、そこで見た聴いた、ジュリー・アンドリュースが何とも素敵だったこと。表題「サウンドオブミュージック」はもちろん、「ドレミの歌」「エーデルワイス」…。彼女は天使の歌声を持つ教師役(マリア先生)で、しかし物語は戦時下だから、同時に憂愁の表情もときに浮かべる。「マイ・フェイバリット・シングス」は、子供ごころにじんと染みた。バラに滴る雨滴子猫のひげ 鼻やまつ毛に残った雪のかけら 春へと溶けゆく銀白の冬 ハチに刺されたとき 悲しい気分になったとき 好きなもののことを思い浮かべる――」。ちんぷんかんぷんな話で申し訳ない。記者なりに思うミュージカルの面白さ。「恋」とか「愛」は当然として、「失意」「いさかい」「別れ」「再会」…までも、すべて歌によってブレイク、爽やかに昇華されることがなんとも凄い。

      ☆       ☆

 浅田次郎「おもかげ」を読んだ。定年を迎えたエリート商社マン65歳が、送別会の帰りに地下鉄車内で突然倒れ集中治療室に運び込まれる。生死の境(三途の川?)をさまよう主人公。その脳裏に浮かんでは消える思いが、ノスタルジックに、しかし巧妙淡々と綴られていく。そんな瀬戸際で人間に去来する思いとはいったい何か。生い立ちであったり家族であったり、仕事であったり同僚であったり、あるいは昔の恋人であったりする。傍目には眠っていて昏睡していて、が実は彼の記憶は、状況と時間を超えて生きていること――。うまく要約できない。ただ、読後感はよかった。お話自体は深刻、複雑というしかないが、暗い絶望とははっきり違う。読んでいて、夢の中に浸り込むような感覚が心地よかった。「大人の童話」「走馬燈」の言葉が、印象とすると最も近い。

 こんな一節がある。主人公と、幻の友人=カッちゃんが居酒屋で話すこと。「精いっぱい働いて、退職金もしこたま貰って、女房子供も幸せだろうが、お前の人生はまだ釣り合っちゃいない」「俺たちがどんな思いをしてここまでたどり着いたか。戦後復興、東京オリンピックが何だった。高度成長なんて、俺たちにとっちゃまるで他人事だったろう」。昭和39年東京オリンピックが一つキーワードになっている。浅田次郎氏・26年生まれ。記者より3つ先輩だが、世代としては波長が合い、しみじみ感傷的にもなったりする。その昭和39年、オリンピックに向けたインフラとは何だったか。新幹線、首都高速、大型ホテル、東京モノレール。モノレールは浜松町→大井競馬場、もちろん今も日常利用している。ただその開通39年9月17日、本番3週間前であったことには改めて驚いた。ちなみに当時東京で最も売れた生活用品は、各戸ゴミ処理用ポリバケツ(フタ付き)だという。実際記者には覚えがある。

 64歳を考える。考えたくはないけれど現実に自分の年齢。何があっても不思議ではない…ごく正直にそう思う。それなら一瞬一瞬、一期一会を大事にすること。ただ、日本人の寿命ではなく健康年齢、それが「男性平均・72歳」などと新聞で読むと、がっかりというより愕然とする。え? あと8年しかないじゃないか…。近年自分がシニアになり、一つ明確にわかった誤解(誤算?)を思った。「エポック社・人生ゲーム」は依然ベストセラーらしいが、実際の人生に上がりはないこと、そしてOK牧場など、けっして存在しないこと。まあしかし、それが20代はもちろん、記者50代後半まで、まるで気づいていなかった。

      ☆       ☆

 一人花見。ここ数年、都電「学習院下」「面影橋」、ちょうど中間にある、神田川沿い遊歩道をマイスポットと決めている。見事なソメイヨシノ並木が1キロほども続くのに、意外なくらい人出が少ない。ネット流布とか、そのへんで盲点なのか、ゆったりのんびり散歩ができる。桜はどこにあってもきれいだが、記者個人的には川べりに咲く桜が最も好きだ。はらはらと落ちる花びら、水面から立ち昇ってくる、なにか懐かしい匂い。そしてもう一つ、ここはオレンジ、アイボリー、ピンク、グリーン…カラフルな車体の都電が行き交う交差点で、眺めていて時を忘れる。

 目黒川沿いに位置する、わが日刊競馬社屋。こちらも“隠れたお花見スポット”だと毎年思う。開花、満開、散りぎわ…2階編集部窓から、ちらちら眺めつつ(当たらない?)予想をつける。長く続いてきた小さな幸せ…といえるだろうか。もっとも今年の桜は足が早く、本日4月5日、あらかた葉桜になってしまった。





吉川 彰彦
Akihiko Yoshikawa

日刊競馬南関東公営版解説者

スカパー!・品川CATV大井競馬解説者、ラジオたんぱ解説者
 常に「夢のある予想」を心がけている、しかしそれでいてキッチリと的中させるところはさすが。血統、成績はもちろんだが、まず「レースを見ること」が大事だと言う。その言葉通り、レースがある限り毎日競馬場へ通う情熱。それが吉川の予想の原点なのである。




【バックナンバー】




格安「新聞」印刷

個人のお客様も歓迎!
結婚記念日や還暦のお祝いなどにどうぞ。
料金は41000円(税別)からと格安でお請けいたします。一生に一度の記念日に、あなたが1面を飾る素敵な新聞はいかがですか?

その他にもフリーペーパー、個展・コンサート・学園祭などイベントのチラシ、地域コミュニティ紙、各種後援会会報、販促ちらし、学生新聞など予算を抑えつつ大量に必要な場合に最適です。 まずは下記ページをご覧になり、メールにてお問い合わせください。不明な点などがありましたら、丁寧にご説明いたします。

■お問い合わせ
  sanpei01@nikkankeiba.co.jp

詳しくは≪有限会社三平印刷所ウェブサイト≫をご覧ください。




日刊競馬トップページ
株式会社日刊競馬新聞社 東京都品川区大崎1-10-1