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2017.11.15更新

「永遠の名牝」

 ロジータが亡くなった。いや現在完了形ではなく、死亡したのは昨年12月。悲嘆、傷心、失意の関係者が、公表に忍びなかったものらしい。リリースは11月7日、川崎競馬開催中、自らの冠レース「ロジータ記念」前日。献花台がしつらえられ、それから4日間、多くのファンが手を合わせたと聞いた。1986年生まれ、享年30歳。いつもながら時の流れの速さを思う。もちろん年齢からは大往生。ただ記者イメージ、彼女は稀代の女傑である一方、少女っぽく可憐な雰囲気もあったから、そんな言葉はもうひとつしっくりこない。ロジータは、やはり「谷間の百合」である。

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 競走馬としての足跡をおさらいする。15戦10勝、牡馬混合クラシック3冠は元より、東京大賞典、川崎記念、古馬基幹レースをこともなげに圧勝した。颯爽として涼しい顔。そのレースぶり、多少身びいきを承知で書けば、砂のディープインパクト…そんな感じか。常に自由奔放、闊達に走り、最後はいつもあっという間に突き抜けている。本格化した3歳春以降、負けらしい負けは2戦しかない。JRAオールカマーとジャパンC。もっともオールカマーは初体験の芝コース5着。勝者オグリキャップ…と思い出せば、なおさら感慨が深くなる。

 今思えば、短くあっけない競走生活だった。2歳、10月10日デビュー、4歳、2月12日ラストラン。およそ1年半を、それこそ風のように駆け抜けている。改めて1989年「東京大賞典」のビデオを見た。持ったまま4馬身差。当時JRA交流でこそなかったが、2着スイフトセイダイはいわく岩手の怪物(通算27勝)で、後のメイセイオペラと較べても、さして遜色ない実力派だったとふり返る。繰り返すが、馬なりの4馬身差。コンビを組んだ野崎武司騎手には、何度も取材させていただいた。「この子はね。走ること、レースをすることが、とにかく本当に好きなんだ…」。至福の笑顔が忘れられない。

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 母としてのロジータ。むろん早いリタイア自体が、当初から関係者(高瀬牧場)の思惑、期待感でもあっただろう。しかし、その夢が現実として着々、ほぼイメージ通りに叶えられていったことがどうにも凄い。帝王賞、川崎記念を勝ったカネツフルーヴ、JRA鳴尾記念、朝日CCを制したイブキガバメント。改めて確認すると、ロジータの生んだ子は総計15頭、未出走、未勝利は、ただ3頭だけだった。もちろんというか、たぶんというか、彼女が子育て、英才教育をほどこした形跡はない。山野浩一先生のいう「血が駆ける」を改めて実感する。

 仲間うちのPOゲーム。記者は初仔シスターソノから始まり、ロジータ産駒を一貫無条件で1位指名した。オースミサンデー、イブキガバメント、カネツフルーヴ、アクイレジア…。もっとも彼女の産駒は意外に晩成型という傾向で、おおむね3歳ダービーまでを期限とするこの種のゲームには、あまり貢献しなかった。実際、稼ぎ頭カネツフルーヴ(10勝・収得賞金4億3千万円)にしても、真価発揮は5歳以降。ただそれでも満足な気分は味わえた。たとえば友人のこんなひとこと。「ヨシカワくんは今年もロジータか。でも、1位指名っていうのは、その家の表札みたいなもんだからな…」。気恥ずかしく、しかしちょっと嬉しかったことを覚えている。

 ロジータの凄さはさらにあった。一代女横綱、優秀な繁殖牝馬だけでは終わらない。自らを始祖とする“ロジータ系”のようなものを、小規模ながら確実に構築していく。初仔シスターソノがレギュラーメンバーを産み落とした。2001年、JBCクラシック第1回覇者。そしてそのレギュラーメンバーが、数少ない産駒から2009年、東京ダービー馬サイレントスタメンを輩出する。奇跡に近い。JRAで著名な薔薇一族…ほどキラキラ華麗ではないけれど、ひそやかで、しかし骨っぽく確かな偉業。南関東ファンにとってロジータは、やはり女神であり聖女である。

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 10月8日、今年の「ロジータ記念」には、ローレライという馬が出ていた。ロジータ→アクイレジア→アルデュィナ…と続く、ひ孫にあたる。あえて説明もいるまいが念を入れて書く。アクイレジアは2004年、ダート出世レース「端午S」を勝ち、ジャパンダートダービーを2着している(当時アジュディミツオーに先着)。今回同馬優勝なら、それこそ奇跡、歓喜の特ダネになりそうだった。結果は離された4着。まあしかし勝負の現実とは、ちょっとほろ苦い…くらいがいいかもしれない。ほのかな想い、夢の途中というやつ。ともあれローレライは父ゴールドアリュール、中〜長距離向きの追い込み馬で、今後楽しみな存在ではもちろんある。

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 こんなときしばしば思う。先輩、友人、知人…人間の訃報とは、ただただ悲しくやりきれないが、対して好きだった競走馬の訃報には、ホッと気持ちがやすらいで、ひととき甘い感傷、不思議なぬくもりを感じたりする。しっとりしみじみ。ある意味、生きていく上での夢とやすらぎ。むろん手前勝手だとは改めて思う。







吉川 彰彦
Akihiko Yoshikawa

日刊競馬南関東公営版解説者

スカパー!・品川CATV大井競馬解説者、ラジオたんぱ解説者
 常に「夢のある予想」を心がけている、しかしそれでいてキッチリと的中させるところはさすが。血統、成績はもちろんだが、まず「レースを見ること」が大事だと言う。その言葉通り、レースがある限り毎日競馬場へ通う情熱。それが吉川の予想の原点なのである。




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