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2017.02.03更新

「初春の陰影」

 初詣は、数年前から1月下旬…と決めている。調布在住の記者には、ちょうど東京競馬開幕で都合がいいこと、その帰路である大國魂神社が日常、平穏を取り戻すこと。今思い出しても新年三が日の混雑にはゲンナリする。京王線・府中駅改札口からまったく前に進めない。伊勢丹を左手にみて旧甲州街道までおよそ百メートルを小一時間かかった。こりゃダメだ…。日本人とはいつからこうも信心深くなったのか。やむなく断念、結局かたわら「銀ダコ」でお土産を買ったことだけが一種トラウマとして残っている。

 ともあれ新年の神社。以前も書いたことだが、記者は本殿脇の“絵馬”をみながらいつもしばらく過ごしてしまう。みんなの願いとはいったい何か。「家族元気で暮らせますように」が定番50%、「受験(高校大学)受かりますように」がこの時季らしく30%。以下「いい人と巡り合えますように」10%、「赤ちゃんが無事生まれますように」10%…そんなところか。結局あまり万年変わらない。ごく普通には、日本人に限らず人類の願いというもの。ただ、「夫(妻)の病気が快癒しますように」「姉(弟)と仲直りできますように」、そうした一筆に出会ってしまうと、事情もまるで知らないのに何やら涙ぐんたりする。

 もっとも“今”を感じさせる絵馬も、中にはあった。多かったのは「稀勢の里関、横綱になれますように…」。若の花(お兄ちゃんの方)以来、日本人横綱19年ぶりとは改めて驚くが、実現してもちろんよかった。稀勢関はここ数年ずっと大國魂神社、節分豆まき役を担っている。今年は2月3日(本日午後6時!)。胸を張って壇に昇れる。もう一つ、「とらんぷさん、はやくだいとうりょうやめてください…」という絵馬が1通あった。裏書きをみると、これは小学校2年生男子だった。確かにトランプさんは大いに心配。ТPPはともかく、メキシコの壁、難民排除、オバマケア撤廃…。この人は大統領というより、暗愚な王さまをイメージさせる。

       ☆       ☆

 残念で悲しいことがあった。本紙中央版デスク・田所直喜が亡くなった。53歳。盲腸を原発とする難病(症例が少ない)で、およそ一年半闘病の末に旅立ってしまった。地方予想担当の記者とはテリトリー違いだが、編集部同フロアだから、その人となりはよく知っている。気が合って話題が合ってしばしば飲んだ。当然ながらギャンブル談議が多かった。彼は、競馬に限らず、競輪、オートレース、麻雀…その方面すべてに精通していた。そしてデスク勤務ながら現場主義。興味関心のおもくままどこにでも足を伸ばし、業界内外に素晴らしいコネクションも築いてきた。当ホームページ「好亊記」連載。バックナンバーが残っているので、ぜひお読みいただきたい。

 記憶に深い思い出を一つ書く。彼が日刊競馬7〜8年生(30代前半)ころと記憶する。その春入社した青年が、慣れない机に一人ポツンと不安そうに座っていて、そこに彼が、何げなくさりげなく声をかけた。「あ、○○くんだったな。オレ田所っていうんだ。何かわからないことあったら聞いてくれよ…」。ありそうでないこと。できそうでできないこと。少なくとも当時の記者にはできなかった。ちょうど10歳下なのに感心した。以後20年、ふり返ると恥ずかしくて懐かしい。ごく自然なオトナの気遣い。事実彼は40代から長く採用人事担当で、おおむね適材適所、スムーズ円滑な職場作りに貢献した。意欲を持った競馬青年がイキイキと過ごせること。それは日刊競馬の“社風”でもある。

 最期の一週間前にお見舞いした。衰弱があって正直寝たきり。しかしよほど辛い状況で、なお明るく機嫌よくふるまってくれる姿に頭が下がった。多くの友人知人が入れ代わり立ち代わり訪れ、しばし談笑のあと握手して帰っていく。夕刻5時になり本人希望でベッド横のテレビをつけた。大相撲千秋楽。そういえば彼は相撲も大好きで、下位力士、成長株などにも驚くほど詳しかった。結びの一番、稀勢の里が白鵬に勝った。土俵際、万事休すから逆転劇。決まり手“すくい投げ”だが、見方によっては疑惑も浮かぶ。しかし、その瞬間つぶやいたひとこと。「白鵬、いいとこあるよな…」は彼らしかった。別れ際まで笑顔だった。

 つくづく明朗で、心根がやさしかった男だと思う。つけ加えれば、周囲がみなうらやむような、思わず微笑んでしまうような愛妻家でもあった。お二人は大國魂神社で挙式されたと聞いている。合掌。







吉川 彰彦
Akihiko Yoshikawa

日刊競馬南関東公営版解説者

スカパー!・品川CATV大井競馬解説者、ラジオたんぱ解説者
 常に「夢のある予想」を心がけている、しかしそれでいてキッチリと的中させるところはさすが。血統、成績はもちろんだが、まず「レースを見ること」が大事だと言う。その言葉通り、レースがある限り毎日競馬場へ通う情熱。それが吉川の予想の原点なのである。




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