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2017.03.10更新

「パワースポット」

 菜の花を見に出かけた。東海道線、藤沢〜小田原の中間「二宮」下車、駅すぐそばの吾妻山公園が名所である。丘というより小高い山で、だから急坂。見晴らし台頂上まで300段の石段はけっこうきついが、登りきった瞬間、思わず「おお…」と声が出た。この景色は“パラダイス”と呼んでいいと思う。冬の陽にきらきら光る相模湾を背景に、菜の花畑が縦横無尽、ひたすら奔放に広がっていく。その日は快晴も幸運だった。もう午後2時過ぎなのに、はるか西方の富士山までくっきり見えた。ウイークデー。散歩者は周囲近隣に住む方が大半らしく、観光地めいた騒がしさがまったくないことも嬉しかった。

 菜の花は記者にとって春のイメージ。ただ実際の旬は1〜2月前半で、むしろ厳寒の花に近いらしい。そして実は記者、その前週、都内・浜離宮庭園(新橋近く)に菜の花をのぞきに行った。悪くはない、悪くはないけれど、翌週吾妻山に出かけてしまうとかなり差がある。同じ黄色でも“濃淡”が違うこと。浜離宮はレモンイエロー、吾妻山は菜の花色…そんな感じか。都心からちょっと離れただけで、たぶん土と空気が違うのだろう。ともあれ菜の花は、けっして美しく可憐ではない。鼻を近づけてみても芳香はなく、むしろむせ返るような土臭い匂いで、もういいかな…といったん思う。ただ反面、生命力と活気があって、実際は長く佇んでいたりする。

 以前ここに来たのはいつだったか。二宮から茅ケ崎まで戻り相模線ホームで思い出した。2011年東日本大震災、少し後の3月下旬。当時南関東競馬が1か月ほど休止になり、手持ち無沙汰の記者(初めての失業?)は、行くあてもなく動ける範囲をうろうろしたのを覚えている。上野動物園、多摩動物園など2〜3度ずつ通い、それでもしばらくすると八方ふさがり。で、誰かに聞いて二宮に出かけた。菜の花という植物は頑張る期間が長いのだろう。少なくともその時点、もう一度見たい…という記憶が残った。相模線は茅ケ崎〜橋本、乗降にボタンが必要なローカル線。ただ同じ神奈川県内、南から北、海から山への縦走だから役割が大きい。6年ぶり。しかし車内は中学生、高校生が笑い合ってふざけ合って、その頃とまったく同じ活気があった。

       ☆       ☆

 「キセキ・あの日のソビト」という映画を見た。知人から招待券をいただき、しかししばらく放置していた。「GReeeeN」なるバンド、それは若い歯科医師さんたちのグループで、通常はライヴコンサートなどの顔見せもなくCDオンリーと聞かされたが、正直まるでちんぷんかんぷん。ただ、のぞいたネットレビューに「GReeeeNなんてこれっぽっちも知らなかったオヤジですが、思いがけない感動…」とあって行く気になった。実際のところ行ってよかった。ロックバンドの出世物語…描いていたイメージとはまったく違う人生ドラマ。物語に映画らしい盛り上がりが希少で淡々平板に流れていくことも、逆にああこれは実話…と納得できた。

   家族4人。優秀、真摯な医師で、しかし後を継がせたい息子を説教するのに日本刀まで持ち出す頑固な父(小林薫)、その想いをわかり尊敬しつつ、音楽への夢を断ち切れない長男・次男(松坂桃李 菅田将暉)。そこに、ひたすら明るくやさしい母(麻生祐未)がしっとりと絡んでいく。さまざま紆余曲折、時の流れとともに家族全体の成長(成熟)があり、そして最後はハッピーエンド。いやハッピーエンドかどうかはともかく、実際CDが大ヒットし、同時に医療兼任だから父の希望にも十分応えた。この兄弟は純粋だと思った。歌うとき、誰かとハモるとき、湧きあがってくる鼓動をごく素直に愛していること。彼らがもし単純にスター願望なら、歯科医と両立などありえない選択だろう。

 松坂桃李と菅田将暉。口パクではなく、実演、実写と聞いて驚いた。素晴らしい歌唱力。とりわけ菅田。デビュー作、代表作らしい「道」、難しそうなテンポの曲を、さりげなく軽やかに歌いこなし、それでいて気持ちがしっかり入っている。その夜帰ってから見たネット。「GReeeeNの曲は総じてシャイで繊細、しかしいつも元気と勇気をもらっています…」とあってうなずいた。YouTubeでさらに何曲か聴いてみた。記者感覚、これはビートルズテイストに近いと思った。重ねて独断でいうなら、吉田拓郎、先日亡くなったムッシュかまやつさんとも似たような味がある。

       ☆       ☆

 2月19日東京競馬場「フェブラリーS」がハネたあと、日刊競馬・同期会をした。トキノミノル銅像前集合。昭和51年入社、会といっても4人だが、この夜はどうにも嬉しい集いになった。中央版本紙予想・飯田正美、3年前まで地方版編集長役を務めていた鈴木正之、諸事情で社歴は少なかったものの存在感が抜群だったS・M氏。内輪話で申しわけない。彼の存在感とは、入社その年大儲けが続いたからだ。5月「4歳牝馬特別=現フローラS」で90倍単勝をまとめてゲット。その後同期生は、連夜いやというほどゴチになった。もし今の年齢なら肝臓が潰れていたかもしれない。S・M氏は若干20歳ソコソコなのに鷹揚できっぷがよく、大人(たいじん)の雰囲気があった。「短かったけれど、あのころが人生、一番楽しかったかな…」。マッコリのグラスをグイとあけて微笑した。

 最近になってしばしば思う。若いころ出会った同世代の友人とは素晴らしく貴重なもので、たとえ何十年ぶりだろうと、ただ一度の乾杯で即座に友情が甦る。不思議だがいつでもそう。とりわけ好きなこと、一生懸命なことが同じだった友人の場合は例外がいっさいない。その日4人、改めて顔を見合わすと、飯田正美だけ大丈夫(ほぼ)だが、ほかの3人はアタマが相当怪しかった。信じてもらえないかもしれないが、記者など若いころ、サラサラのロングヘア―。まあしかしこんなこと、自慢にも後悔にももちろんならない。実際それから30年余が経過している。

 書き忘れそうになったことをあわてて書く。その「4歳牝馬特別=オークスТR」を鮮やかに逃げ切ったのはシービークイン。柔軟性のある快速馬で、漆黒(記憶微妙?)の馬体も美しく惚れ惚れした。本番オークスはテイタニヤの3着。しかし彼女は数年後、父トウショウボーイとの間に、3冠馬ミスターシービーを送り出している。鞍上は母子とも同じ、吉永正人だった。





吉川 彰彦
Akihiko Yoshikawa

日刊競馬南関東公営版解説者

スカパー!・品川CATV大井競馬解説者、ラジオたんぱ解説者
 常に「夢のある予想」を心がけている、しかしそれでいてキッチリと的中させるところはさすが。血統、成績はもちろんだが、まず「レースを見ること」が大事だと言う。その言葉通り、レースがある限り毎日競馬場へ通う情熱。それが吉川の予想の原点なのである。




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